研究概要 |
自己抗原の一つとなるhistidyltRNA合成酵素を基にしたD体アスパラギン酸を含むペプチド抗原をマウスに注射し、免疫反応を検討したが、D体を含むものとL体だけのものとで有意差はなかった。そこでD体アミノ酸を含むタンパク質をL体に戻す働きのあるportein L-idopatyl methyltransferase(PIMT)の活性を遺伝子発現レベルで抑える2種類のPIMT-shRNAを検討した。またコントロールとして、PIMT-shRNAの形成ができない形のloop構造を持つものを使った。PIMT-shRNAをA549細胞(肺胞上皮がん由来の細胞、II型肺胞上皮のモデル)に導入し、安定細胞株を樹立した。これらの細胞では2種類のshRNAはヒト由来のPIMT遺伝子発現を抑え、タンパク質発現レベルも抑制できた。一方、コントロールのshRNAを導入した細胞は蛋白発現レベルに変化がなかった。そのときの形態を観察すると、本来A549細胞は上皮の形態をし、お互いに密着した形で増殖するが、PIMT-shRNAを導入した細胞は細胞同士の接着性を失い、線維芽細胞様に変化した。そこで上皮由来のマーカーであるE-cadherin,そして線維芽細胞マーカーであるvimentin,あるいはalpha-smooth muscle actin(alpha-SMA)の染色性を検討し、コントロールを導入した細胞ではE-cadherinが発現していたが、PIMT-shRNA導入細胞ではE-cadherinの染色は確認できなかった。一方線維芽細胞の形態変化したものはvimentin, alpha-SMAの染色性が増加していた。したがって、PIMT遺伝子の発現レベルを下げることで、異性体化したタンパク質が増加し、epithelial-mesenchymal transition(EMT)が起こったと考えられる。間質性肺炎、肺線維症はII型肺胞上皮のEMTが推定されていて、その分子機構としてPIMTの発現低下が異性体タンパク質を蓄積させ、さらに小胞体ストレスを介した細胞の形質の変化が起こったと考えられる。
|