まず、デフェンシンの「新しい抗菌薬」としての臨床応用を目標に、最近発見された真菌由来のデフェンシンであるPlectasinについてその合成ペプチドを用いてin vitroやin vivoにおける抗菌活性の検討を行った。種々の細菌や真菌に対する抗菌活性を調べたが、肺炎球菌ではペニシリン耐性、非耐性に関係なく、強い抗菌活性がみられた。また、 MRSAを含むブドウ球菌やインフルエンザ菌、緑膿菌、カンジダには抗菌活性は認めなかった。ヒトデフェンシンではヒト血清にてその抗菌活性が消失することが知られているが、今回の検討ではPlectasinのこの抗菌活性はヒト血清の添加によっても何ら変化を認めなかった。このことから、 Plectasinはヒトに対して経静脈的な投与でも活性が減弱しない可能性がある。またヒトデフェンシンでは細胞傷害性、サイトカイン産生誘導作用などがあるために、今回Plectasinにもこれらの作用があるかの検討を行ったが気道上皮細胞からのIL-8産生は見られず、また気道上皮細胞などの肺内細胞への細胞傷害性はみられなかった。これらの結果からPlectasinは将来ヒトの感染症において臨床的に使用できる可能性がある。次にαデフェンシンのヒト細胞への作用解明を目的として、気道上皮細胞のムチン産生にたいするαデフェンシンの影響を検討した。 LPS同様αデフェンシンにより気道上皮細胞からのムチン産生が亢進し、マクロライド薬の投与でその作用は抑制された。また、シグナル伝達系の検討では抑制部位が異なり、 LPSとαデフェンシンのムチン産生へのシグナル伝達系が異なることが示唆された。
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