H22年度は、薬剤(ブレオマイシン)がTLR2等の自然免疫系細胞表面受容体を介して炎症を惹起するメカニズムを明らかにする目的で、薬剤と受容体の分子間結合性を検討し、さらに肺コレクチンがその結合性を変化させるかどうかを検討した。 (検討1)HEK293細胞へTLR2、CD14、TLR4、MD-2などの細胞表面受容体の遺伝子を導入し、ブレオマイシンによるNF-κB発現誘導について検討した。TLR2細胞外ドメイン(sTLR2)遺伝子が導入されたHEK293細胞は、ブレオマイシン刺激によってNF-κBを発現した。 (検討2)細胞表面受容体の細胞外ドメイン(sTLR2、sTLR4)を合成し、表面プラズモン共鳴センサー(ビアコア)を用いて、ブレオマイシンとの分子間結合性を検討した。その結果、ブレオマイシンがsTLR2に直接結合することが判明した。また、ブレオマイシンは肺コレクチン(SP-A)とも強固に結合した。 (検討3)ブレオマイシンをELISAプレートに固相し、sTLR2との結合を検討した。また、その結合が肺コレクチンにより阻害されるかどうかについて検討した。ビアコア法と同じくELISA法においても、ブレオマイシンはsTLR2と結合したが、SP-Aによりその結合は阻害された。 (結論)以上の検討結果により、SP-Aは薬剤と受容体の細胞外ドメインとの結合を阻害するメカニズムを介して、薬剤性肺障害を防止する組織保護的な役割をもつことが示唆された。
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