研究概要 |
「材料・方法」 1)同所移植肺腫瘍の作製:ヒト肺腺癌A549細胞及び扁平上皮癌SQ5細胞を(1×10^7個)マウス気管内に注入し、同所移植ヒト肺腫瘍を作成した。肺組織をフォルマリンで固定し、HE染色した。組織切片を観察し、腫瘍の大きさ及び壊死状況を計算した。 2)同所移植肺腫瘍の増殖状態の解析:担癌マウス(同所移植肺癌と皮下移植肺癌)にBromodeoxyuridine(BrdUrd,60mg/kg)を腹腔内注射し、20分後マウスを解剖し、肺腫瘍が存在する肺組織及び皮下肺腫瘍を摘出する。固定した組織切片を抗BrdUrd一次抗体で免疫染色し、BrdUrd positive細胞を増殖する細胞として計測し、同所移植肺腫瘍及び皮下腫瘍の増殖を比較した。 「結果」 本同所移植肺腫瘍モデルではA549及びSQ5肺腫瘍細胞の腫瘍形成率はそれぞれ最大80%、100%であった。腫瘍は左肺と比べ、右肺により多く形成(右上>右下>中肺葉)した。肺腺癌A549はマウスの肺胞から腫瘍を形成し、扁平上皮癌SQ5はマウスの終末細気管支から腫瘍を形成していた。本同所移植法による得られた肺腫瘍は大きさが様々であった。A549腫瘍では短径が20〜570μm,長径が70〜750μmの腫瘍コロニーでは壊死が起こしてなかった。A549腫瘍では短径が680〜5500μm,長径が800〜15000μmの腫瘍コロニーでは中心部に壊死があった。SQ5腫瘍では短径が40〜700μm,長径が70〜830μmの腫瘍コロニーでは壊死がなかった。SQ5腫瘍では短径が5400〜5200μm,長径が600〜6100μmの腫瘍コロニーでは中心部に壊死があった。同所移植肺腫瘍の増殖を抗Brdurd免疫染色した結果、肺腺がんA549及び扁平上皮がんSQ5では細胞の種類及び移植部位によって異なる増殖パタンを示していた。 「結語」 本同所移植肺がんモデルは各成長段階の肺腫瘍を得られ、肺腫瘍は右肺により多く、右上>右下>右中肺葉の順に分布した。同所移植肺腫瘍の発生や分布はヒト肺腫瘍と類似していた。本同所移植肺腫瘍モデルはよりヒト肺腫瘍の特徴を反映する肺腫瘍が得られ、ヒト肺腫瘍の研究により良い動物モデルを提供することが期待される。
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