研究課題/領域番号 |
20590931
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
康 芸 横浜市立大学, 医学研究科, 特任准教授 (60332607)
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研究分担者 |
大村 素子 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (70244506)
チュンポール ティララダノン 横浜市立大学, 医学研究科, 特任准教授 (20448682)
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キーワード | 同所移植 / A549細胞株 / SQ5細胞株 / 肺癌 / 免疫染色 / BrdUrd |
研究概要 |
本研究の目的は我々が確立した同所移植ヒト肺腫瘍を用いて、腫瘍細胞特性を測定、分析、肺腫瘍の研究に適切な腫瘍モデルを提供ことである。 【方法】ヒト扁平上皮癌SQ5細胞を用いて、7~9週齢のBalb/cヌードマウスの気管内注入による同所移植肺腫瘍を作成し、抗がん剤による肺腫瘍のアポトーシスを検討した。 癌治療によく使われるpaclitaxel (6mg/ml)を用いた。Paclitaxelを調製する溶剤として広く使われる生理食塩水及び我々は新たに考案したα-Cyclodextrinを用いた。アポトーシスの検出はTUNEL法を用いた。 【成果】生理食塩水と比べ、Paclitaxelがα-Cyclodextrin (10mg/ml)に良く溶けていた。マウスへの投与量は1mg/ml、 12mg/kgに決めた。抗腫瘍効果を培養細胞SQ5で調べ、Paclitaxel/α-CyclodextrinとPaclitaxel/生理食塩水と有意差が無かった。生理食塩水及びα-Cyclodextrinで調製したPaclitaxelをマウスの尾静脈から1回に投与し、24時間後のマウス肺組織をHE染色した。コントロールとして未処理及びα-Cyclodextrin単独投与したマウスとした。Paclitaxel/生理食塩水を投与したマウスの肺組織に肺水腫、肺出血などが顕著であったが、Paclitaxel/α-Cyclodextrin及びα-Cyclodextrin単独を投与したマウスの肺組織には肺出血は僅かであった。α-Cyclodextrinでpaclitaxelの調製はより適切であったことが示唆された。Paclitaxel/α-Cyclodextrinを担がんマウスの尾静脈から投与し、24時間後にマウス肺組織を回収し、腫瘍細胞のアポトーシスを検討した。同所移植したSQ5肺腫瘍のapoptosis indexはコントロール腫瘍と比べ、有意差がなかった。これは以下のことが考えられる。1)SQ5培養細胞は良くpaclitaxelに反応するが、動物移植腫瘍では腫瘍の塊には届いたpaclitaxel量が少なかったと考えられる。腫瘍の血液供給やpaclitaxelの代謝が関わっている可能性があると予想される。2) SQ5培養細胞では添加したpaclitaxelが常に腫瘍細胞と接触し、作用することが予想されるが、動物移植腫瘍ではpaclitaxelが血液循環に運ばれて、腫瘍塊に作用する時間が少ないと予想される。今後担癌マウスにpaclitaxelのトータル投与量や注射回数を増やし、paclitaxelによる肺腫瘍の治療効果を調べる必要性がある。
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