研究概要 |
【目的】2008年度は、ウイルスニ重鎖RNAのアナログであるpoly I:Cを,野生型マウス(+/+)とマスト細胞欠損マウス(W/w^v)に気道内投与し,気道炎症の差異を検討することで、マスト細胞のウイルス防御への関与を明らかにすることを目的とした。また、細菌菌体成分として、グラム陽性球菌リポペプチドのアナログであるTLR2リガンド、Pam_3CSK_4を気道内に投与して、気道炎症を比較した。 【方法】+/+とWIW^vに、poly I:Cまたは、Pam3CSK4を3日間点鼻後、4日目に解析した。また、W/w^vへの+/+骨髄由来培養マスト細胞の移入実験も行った。評価項目は、気管支肺胞洗浄液中の細胞成分、気道過敏性とした。気管支肺胞洗浄は、留置針より生理食塩水を注入・回収し、白血球分画を検討した。気道過敏性は、拘束型呼吸機能解析装置を用いて、アセチルコリン(Ach)吸入後の気道抵抗を測定した。 【結果】+/+へのpoly I:C点鼻で、BALFリンパ球・好中球数が有意に増加し、炎症細胞浸潤を認めた。W/w^vでは、BALF細胞数が有意に少なかったが、マスト細胞移入により回復した。 気道過敏性については、いずれの群間でも有意差は認められなかった。+/+へのPam_3CSK_4点鼻でも、W/W^vではBALF細胞数が有意に低値であった。 【結論】ウィルスニ重鎖RNAによる気道炎症は、マスト細胞欠損マウスでは減弱し、マスト細胞移入で回復した。ウイルス性気道炎症形成へのマスト細胞の寄与が示された。また、グラム陽性球菌に対する気道炎症惹起にもマスト細胞が関与している可能性が示唆された。
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