研究概要 |
【目的】2008年度は、ウイルス二重鎖RNAのアナログであるpoly I:Cを、野生型マウス(+/+)とマスト細胞欠損マウス(W/W^V)に気道内投与し比較した。+/+では、気管支肺胞洗浄液(BALF)中リンパ球・好中球数が有意に増加したが、W/W^Vでは、細胞数が有意に少なく、マスト細胞移入で回復することから、ウイルス性気道炎症形成へのマスト細胞の寄与が示された。2009年度は、その機序の一端を明らかにする目的で、BALF中のサイトカイン・ケモカイン濃度を網羅的に検討した。 【方法】+/+とW/W^Vにpoly I:Cを3日間点鼻後、4日目にBALFを採取し、23種の液性因子をLuminexシステムを用いて、網羅的に解析した。 【結果】複数のBALF中液性因子が、+/+に対するpoly I:C投与で増加していた。BALF中ケモカイン(MCP-1,RANTES,KC,MIP-2,MIP-1β),サイトカイン(G-CSF,M-CSF,IL-6)濃度は、+/+で上昇していたが、W/W^Vでは有意に低値であった。 【結論】ウイルス二重鎖RNA成分に対し、マスト細胞は複数のケモカイン、サイトカイン産生に関与し、気道におけるウイルス感染防御的な炎症形成に寄与している可能性が示唆された。リンパ球および好中球指向性の複数のケモカインや、好中球生存延長に関与するサイトカインが、ウイルス二重鎖RNA投与後のリンパ球、好中球性炎症形成に関与している可能性が考えられた。
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