研究課題
本研究は、マスト細胞の生体内での新たな役割として、ウイルス感染に対する生体防御機構への関与を明らかにすることである。前年度までに、マスト細胞欠損マウスにウイルス二重鎖RNA(dsRNA)のアナログであるpoly I : Cを投与する系を用いて、マスト細胞は複数のケモカイン、サイトカイン産生に関与し、気道におけるウイルス感染防御に寄与している可能性を明らかにしてきた。今年度は以下の計画を立案した。1) ウイルス防御に関与するマスト細胞TLRを同定するTLR3欠損マウス由来のマスト細胞をマスト細胞欠損マウスに移入することで、マスト細胞TLRのウイルス防御への関与を証明することを目指したが、TLR3欠損マウスの安定的入手が困難であり、結果を得るに至らなかった。本研究申請後に、ウイルスdsRNAの受容体については、TLR3の他にMDA-5,RIG-1といった新規細胞内受容体も同定されてきており、dsRNAがどの受容体を用いるかは細胞種によって異なる事も報告されている。TLR3以外の受容体も含め、今後もマスト細胞のウイルス認識に関与する受容体に関する検討を継続したい。2) ウイルス感染による気管支喘息増悪へのマスト細胞の関与を検討するOVA(ovalbmin)による感作、チャレンジによる喘息モデルマウスにdsRNAを投与するとアレルギー性気道炎症は増悪し、気道過敏性は亢進することを既に見いだしており、気管支喘息のウイルス感染による増悪モデルとして検討してきている。また、マスト細胞欠損マウスと野生型マウスに対し、OVA感作、チャレンジを行うと、マスト細胞欠損マウスでは炎症細胞浸潤は軽度低下するものの、Achに対する気道過敏性は残存することを予備的検討で確認している。マスト細胞欠損マウスと野生型マウスに喘息モデルを作製した後に、poly I : Cを追加投与し、増悪におけるマスト細胞の役割を明らかにすることを目指したが、炎症細胞浸潤における有意差を見出だすに至らず、さらに投与量の条件検討が必要であることが明らかになった。今後も至適条件を見出し、マスト細胞の果たす役割を明らかにしていきたい。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) 図書 (1件)
J Immunol.
巻: 186(9) ページ: 5254-60
Allergol Int
巻: 59(4) ページ: 363-7
Clin Exp Allergy
巻: 40(8) ページ: 1266-75