研究概要 |
(題名)all-trans retinoic acid (ATRA)による悪性胸膜中皮腫に対する抗腫瘍効果 (目的)悪性胸膜中皮腫は胸膜に発生する悪性腫瘍であり、アスベスト曝露との関連性が高く今後増加傾向が予想される。しかし現在、生存期間の延長等の有用性が認められる治療方法に乏しく、非常に難治性で予後不良であるために治療方法の新現開発が重要である。現在までにわれわれは間質性肺炎・肺線維症の研究を行い、ATRAが、ヒト肺線維芽細胞からのIL-6とTGF-beta1の産生抑制を介して、肺線維症発症の抑制をもたらすことを、ブレオマイシン誘発肺線維症マウスモデルと放射線照射誘発性肺線維症マウスモデルにおいて実証してきた。今回われわれは肺線維芽細胞と同様の間質系細胞である悪性胸膜中皮腫細胞に対するArRAの抗腫瘍効果について検証した。 (方法)悪性胸膜中皮腫細胞をSCIDマウスの皮下に移植し、ATRAを腹腔内投与した。 (結果)週3回のATRAの腹腔内投与によりSCIDマウスの皮下に移植した悪性胸膜中皮腫細胞の増殖は抑制され、腫瘍内のTGF-beta1, PDGF receptor-betaがmRNAレベルで抑制された(in vivo)。そのメカニズムの一環として、悪性胸膜中皮腫細胞の系において、TGF-beta1/TGF-beta1 receptor autocrine細胞増殖とPDGF-BBを介するmigrationのいずれも、ATRA添加により抑制された(in vitro)。 (総括)ATRAは現在急性前骨髄性白血病(APL)の治療薬として広く用いられており、安全性が確立されまた経口で投与しやすく、今後悪性胸膜中皮腫への臨床応用が望まれる。 以上の研究結果の知見を肺線維症の研究にフィードバックし、現在肺線維症の予防および治療法の新規開発中である。
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