常染色体優性遺伝性多発性嚢胞腎(ADPKD)はPKD1遺伝子あるいはPKD2遺伝子の異常を原因とする、最も頻度の高い遺伝性腎疾患である。今回私たちは、ADPKDのモデル動物として、薬剤誘起性のPkd1コンディショナルノックアウトマウスならびにPkd2遺伝子欠失変異体導入トランスジェニックメダカを作製・解析し、それを用いた薬効評価システムを確立することをこの研究の目標に定めた。 薬剤誘起性のPkd1コンディショナルノックアウトマウスでは、生後1週から投与開始した早期嚢胞形成群と生後2週で投与開始した後期嚢胞形成群を生後7週で比較した。早期嚢胞形成群で腎重量・体重比8±2.8%、Cystic index59±5.9%、血液尿素窒素155±54mg/dl、嚢胞上皮細胞のBrdU取り込み率6.4±0.4%であったのに対して、後期嚢胞形成群では腎重量・体重比1.7±0.2%、Cystic index3.6±1.3%、血液尿素窒素25.5±2.1mg/dl、嚢胞上皮細胞のBrdU取り込み率4.2±0.8%であり、早期嚢胞形成群において腎嚢胞形成が顕著であった。次にmTOR阻害薬であるeverolimusを嚢胞が顕著であった早期嚢胞形成群を用いてその投与実験を行った.薬剤投与群で腎重量・体重比3.6±1.9%、Cystic index31±15%、血液尿素窒素74±38mg/dl、嚢胞上皮細胞のBrdU取り込み率1.3%でいずれも非投与群に比較し、著明に抑制された。肝臓の嚢胞についても今後検討していく。Pkd2遺伝子欠失変異体を遺伝子導入したトランスジェニックメダカにおいては、それぞれの系統での導入遺伝子発現量の確認、嚢胞形成の解析を行った。さらに嚢胞上皮細胞における繊毛の減少・欠落が観察され、その機序につき検討している。
|