研究概要 |
私たちは、ADPKDのモデル動物として、薬剤誘起性のPkd1コンディショナルノックアウトマウスならびにPkd2遺伝子欠失変異体導入トランスジェニックメダカを作製・解析した. 薬剤誘起性のPkd1コンディショナルノックアウトマウスにおいてmTOR阻害薬であるeverolimusを嚢胞が顕著であった早期嚢胞形成群を用いてその投与実験を行った.肝臓についての検討では、肝重量体重比に有意差はなかったが、非投与群のCystic index 17±6.4%に対し薬剤投与群のそれは7.0±1.9%と有意に嚢胞形成が抑制されていた.嚢胞上皮細胞のBrdU取り込み率は3%で非投与群(11%)に比べ著明に抑制された.TUNEL陽性細胞の検討では腎臓では薬剤投与群で27.5±8.6%(非投与群8.3±5.1%),肝臓では薬剤投与群で5.8±2.5%(非投与群2.1±0.3%)と有意にアポトーシス細胞が増加していた.このことからmTOR阻害薬が腎嚢胞のみならず肝嚢胞にも有効であり、その機序としては細胞増殖の抑制とアポトーシスの増加の関与が示唆された. Pkd2遺伝子欠失変異体導入によるトランスジェニックメダカにおいては、最も嚢胞形成を認めていたPkd2 Tet-On誘導系は導入遺伝子数が少なく,嚢胞形成の少ないPkd2 EF1α系で最も導入遺伝子数が多かった.この結果から導入遺伝子数のみが嚢胞形成に関与していないことが示唆された.EF1α系とTet-On誘導系ではドキシサイクリンによる暴露の違いを可能性として考え,EF1α系のメダカをドキシサイクリンに暴露した.その結果Pkd2 EF1αでは嚢胞形成が促進され,Pkd2 Tet-On誘導系が最も嚢胞形成が著明であったのはドキシサイクリンに暴露したことも一つの要因として考えられた.
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