メチルグリオキサールとその酸化的分解物であるギ酸の細胞障害性に関する検討 前年度までの検討にて、メチルグリオキサールが慢性腎臓病と生活習慣病に共通する病因因子となっている可能性が示唆された。メチルグリオキサールは生体においてグリオキサラーゼ酵素系により乳酸に解毒されるが、酸化的環境下ではギ酸に分解されることが示唆されている。そこで、その臨床的意味を検討するために、培養細胞を用いて、メチルグリオキサールとギ酸の細胞障害性について検討した。用いた細胞はヒト組織球セルラインである。メチルグリオキサールは濃度依存性に酸化的細胞障害を惹起したが、内因性過酸化水素消去処置にてその障害性は抑制された。一方、ギ酸は濃度依存性に細胞バイアビリティーを増加させたが、内因性過酸化水素消去処置にてその効果は抑制された。また、ギ酸の細胞バイアビリティー増加効果はテトラヒドロ葉酸投与で増強、葉酸拮抗剤で減弱したことより、ギ酸の細胞バイアビリティー増加にはプリン代謝系が関与していることが示唆された。 意義と重要性に関して 本検討結果より、毒性メチルグリオキサールからギ酸へ分解が促進されるのは生体にとって解毒作用を有するものであり合目的的と考えられた。この際には、プリン代謝系が促進されることから、尿酸生成を促す可能性も考えられた。最近、血中尿酸濃度と心血管系イベントとの関連が指摘されているが、この背景に糖の酸とメチルグリオキサールの酸化的分解が関わっている可能性も考えられる。
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