昨年度までに、我々は微小単離尿細管灌流法を用いた実験により、腎髄質部の太いヘンレの上行脚(mTAL)の血管側に、カルシウム感知受容体(CaR)作動薬であるネオマイシンを投与すると、生理的な重炭酸イオンを含む灌流液の下では、細胞内がアルカリ化するということを明らかにした。さらに、灌流液中のNaイオンあるいはKイオンを除いた液を用いて実験を行い、この現象にはNaイオンは関与しておらず、Kイオンに依存しているという事実も見出した。 今年度は、CaR作動薬投与時の細胞内アルカリ化に対し、Kイオンが、どのようなメカニズムを介して寄与しているかを明白にするため研究を推し進めた。初めにH^+-K^+-ATPaseの阻害薬であるSch28080を管腔側に投与した際に、細胞内アルカリ化が影響を受けるか否かを確かめた。その結果、ネオマイシン投与前の細胞内pHはiPH7.07±0.02だったが、管腔側に20μmol/lのSch28080存在下にネオマイシンを投与した際はiPH7.08±0.01とほとんど変化がみられず、細胞内アルカリ化が抑制されることがわかった。 次年度は、微小単離尿細管灌流法を用いたmTALの解析がほぼ終了したので、集合尿細管などの他の尿細管分節におけるCaRの細胞内pH制御について研究を継続する。また、尿中落下尿細管細胞培養系を用いた腎結石症症例からの尿細管上皮でのCaRの発現や機能異常についての検討を行う予定である。
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