糖尿病性腎症(以下、腎症)の進展に対する防御機構における抗酸化的防御酵素Superoxide dismutase(SOD)の役割を解明するため、腎症への感受性の異なる2系統のIns2^<Akita>糖尿病マウスモデル : KK/Ta-Akita、C57BL/6-Akitaの腎でのSOD isoform : cytosolic CuZn-SOD(SOD1)、mitochondrial Mn-SOD(SOD2)、extracellular CuZn-SOD(SOD3)の発現と局在、およびSOD活性についてオス15週齢マウスを用いて調査を行った。両者は約4週齢から400-600mg/dlの同等の高血糖を呈するにも関わらず、進行性の腎症を発症するKK/Ta-Akitaの腎糸球体でのSOD1とSOD3の発現およびSOD活性は著しく低下し、同部位でのSuperoxideの過剰産生が観察された。その一方で、腎症の発症に抵抗性を示すC57BL/6-Akitaの腎糸球体ではSOD1とSOD3の発現およびSOD活性は比較的保たれ、Superoxideの産生もKK/Ta-Akitaと比較して減少していた。SOD2については両マウスにおいてその腎での発現は保たれていた。さらに、オス10週齢KK/Ta-Akitaに対しSOD活性増強薬の一つTempolを4週間投与したところ、腎糸球体でのSuperoxideの産生が減弱するとともに、腎症の特徴であるアルブミン尿や糸球体組織病変が劇的に改善し、腎症の進展が抑制された。以上の結果より、SODによる抗酸化的防御機構は腎症の進展を抑制する上で重要な役割を果たしていると考えられる。この概念をさらに支持するための研究として、SOD1欠損C57BL/6-Akitaマウスの作製とその腎病変の経時的変化についての調査を現在進めている。
|