維持透析患者は28万人、それにかかる医療費は1兆円を超え、末期慢性腎不全への進行の抑制は医療経済的な面からも重要な課題となっている。そのうち透析導入原因疾患の多くを占めるのが糖尿病性腎症である。本研究では転写因子MafBの糸球体上皮細胞での機能を明らかとし、糖尿病性腎症の進行防御にどのように関わっているかを解明することである。さらにMafBを制御することにより糖尿病性腎症を治療可能となるような創薬につなげるのが最終的な目標である。 平成20年度は、MafBが糖尿病性腎症にどのように関わっているかを調べるため、MafBと糸球体上皮体細胞に発現している分子(ネフリン、ポドシン)のin vitroでの解析とトランスジェニックマウスの作製を行った。 (I)MafBが直接ネフリン、ポドシンの発現制御をしていることの証明 (1)ゲルシフトアッセイネフリンとポドシンの制御領域にMafB蛋自が結合することを、ゲルシフトアッセイを用いて解析した。 (2)ネフリンとポドシンの制御領域にルシフェラーゼの結合した構築を作製し、それを細胞にトランスフェクションした後、MafBを細胞に共発現することによってレポーター蛋白の発現が上昇するかどうかを解析した。 (II)トランスジェニックマウスの作製 ネフリン、ポドシンの発現制御領域に変異を加えそれにLacZを結合させた構築のトランスジェニックマウスを作製した。また、ネフリンプロモーターを用いて腎糸球体上皮細胞にMafBを過剰発現させたマウスを作製した。平成21年度これらのマウスの解析を行う予定である。
|