研究課題
スリット膜は糸球体上皮細胞に備わる特殊に分化した細胞問接着装置であり、系球体バリアー機能の要構造とされている。近年スリット膜を構成する分子がチロシンリン酸化されることが明らかにきれ、バリアー機能がリン酸化カスケード解析されるようになった。本研究課題は、新規の受容体型分子SHPS-1(チロシン脱リン酸化酵素SHRの基質)とそのリガンドCD47を新たな切り口として、スリット膜のバリアー機能を脱リン酸化シグナルの側面から解明することを目的とするものである。平成20年度の研究のより、以下のことを明らかにした。第一に、マウスの腎臓でSHPS-1が足細胞、特にスリット膜近傍に多く発現いていることを確認した。第二に、SHPS-1MUマウスの腎糸球体は、光学顕微鏡上明らかな形態異常を認めず、蛋白尿や腎臓能障害も存在しないが、電子顕微鏡で観察すると、糸球体上皮細胞の微細構造の異常が存在することを明らかにした。SHPS-1MUマウスとは、細胞質内領域を欠くために下流にシグナルを伝達できない変異型SHPS-1を発現する遺伝子改変マウスである。第三に、アドリアマイシンを投与して誘導される蛋白尿が野生型マウスに比較してSHPS-1MUマウスでは明らかに大量であることを明らかにした。第四に、ストレプトゾトシンを投与することにより糖尿病性腎症を誘導すると、野生型マヴスに比べてSHPS-1MUマウスでは大量の蛋白尿が誘導された。以上の解析結果より、糸球体上皮細胞に発現されるSHPS-1が上皮細胞の構造と機能の維持に必須の分子であり、蛋白尿のバリアー機能に重要な役割を果たしていることが裏付けられた。
すべて 2008
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Biochem Biophys Res Commun 37
ページ: 561-566