研究課題
スリット膜は糸球体上皮細胞に備わる特殊に分化した細胞間接着装置であり、糸球体バリアー機能の要構造とされている。近年スリット膜を構成する分子がチロシンリン酸化されることが明らかにされ、バリアー機能がリン酸化カスケードで解析されるようになった。本研究課題は、新規の受容体型分子SHPS-1(SIRP1α)とそのリガンドCD47を新たな切り口として、スリット膜のバリアー機能を脱リン酸化シグナルの側面から解明することを目的とするものである。本研究により以下のことが明らかにされた。(1)SHPS-1は糸球体の足細胞、特にスリット膜近傍に多く発現している。(2)SHPS-1の細胞質内ドメインを欠失する変異マウス(SHPS-1MUマウス)の腎糸球体は、光学顕微鏡上明らかな形態異常を認めないが、電子顕微鏡で観察すると、糸球体上皮細胞の足突起の形態異常が存在する。(3)SHPS-1MUマウスでは野生型マウスに比し、微量ではあるが有意の蛋白尿が検出される。(4)アドリアマイシンを投与して誘導される蛋白尿が野生型マウスに比較してSHPS-1MUマウスでは明らかに大量である。(5)ストレプトゾトシンの投与により糖尿病性腎症を誘導すると、野生型マウスに比べてSHPS-1MUマウスでは大量の蛋白尿が誘導される。以上の解析結果より、糸球体上皮細胞に発現されるSHPS-1が上皮細胞の構造と機能の維持に必須の分子であり、蛋白尿のバリアー機能に重要な役割を果たしていることが裏付けられた。
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Nephrol Dial Transplant. 24
ページ: 2378-83