慢性腎臓病は心血管系疾患の危険因子である。さらに、心血管系疾患において、慢性腎臓病の存在は予後に関わる。したがって、この相互連関(心腎連関)の機序解明とその臨床的モニタリングの構築・臨床応用は重要な課題である。本研究では、骨髄由来細胞で流血中に存在するmesenchymal progenitor cell(fibrocyte)に着目し、腎臓病への関与ならびに臨床検査診断法の可能性を検討している。はじめに、腎生検を施行した各種腎臓病113例に対して、fibrocyteの関与を臨床病理学的に評価した。その結果、慢性腎臓病例においてfibrocyteは間質主体に腎に局在することが判明した。臨床的には、腎間質内fibrocyte数は尿潜血の程度、血清クレアチニン値ならびにCRP値と正相関を認めた。さらに腎間質内fibrocyte数は推算糸球体濾過率(eGFR)および24時間クレアチニンクリアランスと負の相関を認めた。一方、病理学的指標において、腎間質内fibrocyte数は腎間質線維化面積率と正相関を認めた。また、再生検例では、ステロイド治療による疾患活動性の低下に一致して、間質内fibrocyte数は減少した。これらの結果より、ヒト腎臓病、ことに間質線維化機序におけるfibrocyteの関与が推測された。また、腎生検時の間質内fibrocyte数をモニタリングすることにより、腎機能ならびに治療効果を反映することが示唆された。さらに、血液中fibrocyteを同定・計測する臨床評価システムを構築しつつある。現在、簡便に白血球の一分画として計測されることを目指して、基礎的検討を行っている。このシステムを用いて、腎線維化、心腎連関を反映する新規の臨床検査診断法を開拓することを目標としている。
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