研究課題
腎臓におけるNa利尿ペプチド系の意義を検討し、以下の研究成果を得た。1. ANP・BNP受容体(GC-A)欠損マウスの腎病変の解析とアルドステロンの意義の検討Na利尿ペプチド系は強力なRAA系抑制作用を有する。腎臓局所でのNa利尿ペプチド系とRAA系の拮抗関係を調べるため、ANP・BNP受容体(GC-A)欠損マウス(GC-A-KO)にアルドステロンを負荷し腎臓の表現型を野生型と比較したところ、GC-A-KOでのみネフローゼレベルの蛋白尿とpodocyte傷害を来すことを見出し、この作用は血圧とは独立していた。その機序をgene arrayや薬物投与を用いて解析し、GC-A-KO+アルドステロン群で局所でのMAPキナーゼや酸化ストレスが活性化すること、抗MR薬やARB、抗酸化剤でネフローゼやこれらの病態が明らかに改善することを認め、内因性のRAA系賦活化と局所での酸化ストレスが増悪に関与することが示された。2. GC-A発現に関与する腎臓でのmicroRNA発現の解析ヒト培養podocyteを用いてGC-AをターゲットとするmicroRNA発現を解析し、GC-A抑制に関与するmiR-379を見出した。miR-379は糖尿病モデルdb/dbマウス糸球体で発現が亢進しており、糖尿病状態ではANP・GC-A系に抑制的に作用する可能性が示唆された。3. GC-A遺伝子変異ラットの作製と解析ENU mutagenesisの手法を用いて、GC-Aのguanylyl cyclase領域にホモ変異を有するラットモデルを確立した。このラットは野生型と比べ血圧が高く、尿中cGMP排泄が低い傾向を認めた。このように、Na利尿ペプチド系は腎臓局所において、podocyteを含む尿細管以外の複数の作用点で腎保護作用を発揮することが示された。
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