| 研究概要 |
【背景・目的】慢性腎不全患者は記憶や学習などの高次脳機能が障害されているが、その病態については不明な点が多い。動物モデルにおいて、遺伝子組換えヒトエリスロポエチン(rHuEPO)の有効性が数多く報告されており、rHuEPOの脳保護作用の機序として、活性酸素産生を抑制することが明らかにされている。今回、我々は造血作用のないCEPOおよび抗酸化薬Tempol (TMP)の慢性腎不全モデルマウスに対する脳保護効果の検討を行った。【方法】マウス(C57BL/6J 雄、8週齢)に片腎摘および片腎部分焼灼を行い、腎不全モデルマウスを作製した。偽薬投与対象群(Cont-P群)、CEPO投与対象群(Cont-C群)、TMP投与対象群(Cont-T群)、偽薬投与腎不全群(CRF-P群)、CEPO投与腎不全群(CRF-C群)、TMP投与腎不全(CRF-T)の6群を作製した。8週間後にマウスの脳機能を評価するために、放射状水迷路試験(RAWM試験)を施行した。脳組織の酸化ストレスを評価するために脳海馬における8オキソデオキシグアニン(8-OHdG;酸化DNA損傷マーカー)の免疫組織化学染色を行った。【結果】各CRF群の血清尿素窒素は同等であった。RAWM試験では、CRF-P群は各Cont群に対して有意にエラー回数が多く、CRF-CおよびCRF-T群はP-CRF群に対して有意にェラー回数が少なく、CEPOおよび投与による高次脳機能の改善を認めた。脳海馬の神経細胞におけるHE染色では、CRF-P群で変性神経細胞数が有意に多く、CRF-C群はCont群と同等であった。また、同部位の免疫組織化学染色では、CRF-P群の8-OHdGの有意な蓄積とCRF-CおよびCRF-T群の8-OHdGの抑制を観察した。【考察・結論】尿毒症性脳障害の一因は,酸化ストレスによる神経細胞傷害であり、これにより学習・記憶障害に至ると考えられる。CEPOとTMPは,この機序を抑制することにより脳保護効果を発揮していると考えられる。
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