本研究の目的は、腎性低尿産血症における運動後急性腎不全の発症メカニズムの解明である。現在、発症メカニズムとして、腎性低尿酸血症では尿酸排泄が亢進していることから、尿酸が尿細管で析出し、閉塞性腎障害をきたす可能性及び活性酸素のスカベンジャーである尿酸が少ないための活性酸素による腎障害の可能性の2つが指摘されている。今回、閉塞機転について検討を行った。実験動物はURAT1ノックアウトマウス(ホモ接合型、KOマウス)及び野生型C57BL/6マウス(WTマウス)を用いた。ヒトとマウスのプリン代謝における差異として、マウスではウリカーゼにより尿酸からアラントインに代謝され、アラントインがプリン代謝の最終代謝産物である。従って、ウリカーゼの阻害薬であるオキソン酸と尿酸投与後の運動負荷実験を行った。また、腎性低尿酸血症における運動後急性腎不全の発症は、運動に脱水等の促進因子が加わったときに発症すると考えられている。そのため、運動負荷実験前に脱水負荷を行った。運動負荷方法としては、昨年度の実験結果から強制水泳を用いた。観察項目として、血清クレアチニン、nephrin、megalin、Zf9、HIF-1α、KIM-1のmRNA量及び組織所見を用いた。その結果、今回の実験条件により、WTマウスに軽度ではあるが、腎障害を認めた。しかし、KOマウスには、逆に腎障害を認めなかった。今回のオキソン酸と尿酸投与により、WTマウスでは腎臓に対する尿酸負荷が過剰となり、腎障害が発症したと考えられたが、KOマウスでは、その条件でも、腎障害が発症しなかったことは、少なくとも、尿酸排泄亢進による閉塞機転が運動後急性腎不全の発症原因であることは考えにくかった。腎障害が回避された理由として、URAT1以外のトランスポーターの関与が推察された。
|