様々な原因で骨髄造血機能が低下すると、肝でhepcidin-25の産生が促進される。ここに骨髄造血由来因子のホルモンとしての介在が推測される。この仮説を証明するため、本年度はまず、1)骨髄抑制状態を伴う骨髄造血系悪性疾患の臍帯血移植の前後における、血清hepcidin-25と造血機能との相関を調べ、ついで2)骨髄抑制モデルとして、抗がん剤を投与したマウスの骨髄液中のペプチド、遺伝子発現を解析した。 【成果】血清hepcidin-25は、移植の1週後にピークとなり、その制御因子であるIL-6と比例して徐々に低下した。生着状況を反映していると考えられている網状赤血球とは逆相関を呈していた。移植4週後の血清hepcidir-25値が造血機能マーカー可溶性transfferin受容体と逆相関を示した。一方、抗がん剤投与により障害されたるマウス骨髄から、hepcidinに先立ち発現する数種類のペプチド群が、また数倍の発現量を有する数種類の遺伝子群が見つかった。 【意義】血清hepcidin-25値が、臍帯血移植の生着程度、つまり骨髄造血機能を反映していることが判明した。また、障害された骨髄から、発現が亢進している因子が数種類確認された。 【重要性】以上の結果は、骨髄造血機能が低下すると、発現が亢進してくる骨髄由来因子が存在することを示している。同時に認められるhepcidin-25の肝での産生亢進は、これらの因子のどれかが、ホルモンとして肝臓に作用していることを推測させる。
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