|
腎疾患の進展に性差があることは広く認識されており、多くの腎疾患で男性の腎予後は女性に比して不良である。腎疾患の病態・進行には糸球体高血圧および糸球体過剰濾過などの糸球体血行動態異常が重要な役割を演じていることから、本研究では「糸球体血行動態調節機構には性差が存在し、その結果、雄性では腎疾患の病態下で容易に糸球体血行動態異常が生じて腎疾患が進行しやすい」という可能性を検討している。具体的には、これまでに我々がオスの実験動物を用いて明らかにしてきた糸球体血行動態調節機構がメスでも同様か否か、違いが存在するならばその機序と病態生理学的意義を明らかにすることが目的である。
これまでの検討では、生殖可能年齢(1年齢前後)のメスのウサギでは同年齢のオスと比較して、輸入細動脈のアンジオテンシンIIに対する反応性や血管内皮機能に有意な差異を認めなかった。現在、輸出細動脈の血管反応性に性差が存在するかを検討している。さらに、性ホルモンの糸球体血行動態への影響についても検討を開始した。具体的には生理的〜薬理的濃度(pM〜nM)のエストロゲンとアンドロゲンの輸出入細動脈への作用とそれにおよぼす内皮由来血管拡張物質(NO・PGなど)の影響を検討する。
残念ながら未だ有意な成果は得られていないが、今後は上記に加えて高齢動物を用いた実験と「腎機能の老化」機序に重要と考えられている髄質血流の加齢性変化・性差を、特に血管平滑筋のCa^<2+> mobilization機構と内皮機能に焦点を当てて検討することで、「腎臓の老化の性差」に関する研究も行う予定である。
|
