研究概要 |
慢性腎臓病(CKD)患者では心血管病(CVD)が多発することから、「心腎連関」なる概念が想定されている。この連関を解くひとつの鍵として非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)の存在が挙げられる。ADMAは内因性のNO合成酵素阻害物質であり、CKD患者で著明に上昇し、血管内皮障害やCVDの良いバイオマーカーとなり得る可能性が示唆されている。申請者らは、CKDで上昇したADMAが、CVDの進展に関与するばかりでなく、腎局所の内皮障害を介し、糸球体硬化や腎線維化の進展に関与することを見いだしてきた。当該年度にはADMAの上昇が慢性糸球体腎炎患者の腎組織障害のマーカーであることや腎障害のリスク因子であることを見出し報告した(Am J Nephrol.2011)。またCKDにおけるADMAの上昇機序として、終末糖化蛋白(AGEs)、尿蛋白や虚血に伴う酸化ストレスや小胞体ストレスが、腎におけるADMAの産生や代謝酵素(dimethylargi nine dimethylaminohydolase, protein methyltransferase)の異常を引き起こし、ADMAの上昇に寄与していることを明らかにした(論文投稿中)。これらの知見により、CKD、CVDの共有のリスク因子である内皮障害を制御するといった新しいCKDの治療戦略の開発が期待される。
|