慢性腎臓病は心血管疾患発病の強い危険因子になることが大規模臨床試験で明らかになっているが、そのメカニズムについては依然明らかになっていない。一方、最近我々はMethylglyoxal(MGO)などのカルボニル物質は慢性腎臓病で増加し、血圧上昇などを介し、病態進展に関与することを報告している。従って、本研究ではMGOは腎血流に対する影響とそのメカニズムを検討した。 まず、ラットにMGOを慢性静脈内投与し、動脈圧の変化を検討した所、MGOの投与により、急性毒性反応と考えられる血圧の低下がみられた。また、腎髄質間質慢性投与によるカテーテルの先端部の線維化が懸念されたため、線維化が起きる以前の反応を検討した。 MGOをDahl食塩感受性高血圧ラットを麻酔下に、体液および呼吸を管理し左大腿動脈の動脈圧をモニターした。腎髄質間質にカテーテルを埋め込み、薬液を注入した。また、同部に光ファイバーを埋め込み、レーザードップラー法により腎髄質局所血流を評価した。腎髄質間質内に生理食塩液を投与しコントロールをとったのちMGOに切り替えた。MGOの投与により血圧が上昇したが、腎髄質血流の低下は認められなかった。腎髄質血流を増やす作用のあるNOの関与を検討するためにNO合成酵素阻害薬のL-NAMEを前投与し、同様の実験を行ったが、有意な腎髄質血流の低下はみられなかった。腎髄質血流は血圧により大きく影響を受けるため、血圧の上昇がMGOによる腎髄質血流の低下を抑制している可能性が示唆された。平成22年度は、血圧が低下しない用量で検討する予定である。
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