研究概要 |
1. VEGF-Cとリンパ管新生、腹膜透過性亢進(2011米国腎臓学会で発表、投稿予定) (1) ヒト腹膜組織における検討。腹膜組織中のVEGF-C mRNAは、腹膜機能低下群で有意な増加を認め、腹膜の厚さとも相関を示した。(2)免疫染色で、VEGF-C蛋白の発現を腹膜中皮細胞および炎症細胞に認めた。特に腹膜機能不全群では発現上昇を確認した。(3)PD排液における検討。PD排液中VEGF-CとD/P CrとR=0.662(p<0.001)と良好な相関を得た。(4)排液中腹膜中皮細胞培養において、TGF-β刺激で12時間をピークとして3-3.5倍のVEGF-C mRNA、蛋白の上昇を確認し、TGF-βI受容体拮抗薬(LY364947)で抑制がかかることも確認した。そして、そのVEGF-C mRNA増幅率は、D/PCrと相関することが明らかとなった。(5)動物モデルにおける検討。クロルヘキシジンモデル(CGH)を隔日に投与し腹膜線維症モデルを作成。TGF-βI受容体拮抗薬を連日投与した。Type III collagen低下とともに、VEGF-C,リンパ管新生の抑制を確認した。以上より、腹膜線維化にともないTGF-β-VEGF-C pathwayでリンパ管新生が誘導され、治療ターゲットとなりうる点を確認した。 2. VEGF-Aと血管新生 腹膜組織中VEGF-A mRNAと血管新生との相関を確認し、中皮細胞からVEGF-Aが産生され、TGF-βが誘導することを明らかとした。 3. 血管、リンパ管新生を伴わない腹膜透過性亢進(Nephrol Dial Transplant Plus論文) 慢性好酸球性腹膜炎を経験し、腹膜組織採取する機会をえた。組織では、好酸球の組織内浸潤のみならず、免疫組織学的検討によって肥満細胞を多数確認し、化学遊走物質による腹膜透過性亢進と推察された。TGF-βが腹膜血管・リンパ管新生に関与することを確認した。
|