研究概要 |
食塩感受性は心血管疾患、インスリン抵抗性、糸球体硬化の危険因子であり、その発症機序および治療法の解明は重要である。我々は、シクロオキシゲナーゼー1(COX-1)遺伝子欠失マウスが、正常マウスに比較して、高食塩食下で血圧上昇と多尿を示すことを明らかとした。本機序の一因として、プロスタグランディンE2(PGE2)-EP4受容体経路の役割に着目し、選択的EP4作動薬のラット腹腔内投与(6×10^<-10>mol/g体重)が、血漿アルドステロン増加(Veh320±70, EP_41006±77pg/ml)、尿量減少(Veh842±166, EP_4193±36ul/2hr)、FEK(Veh10.1±0.8, EP42.8±0.7%)とTTKG(Veh7.8±0.5, EP_43.1±1.0)低下を生じるが、FENaに影響しないことを示した(Veh0.036±0.008, EP40.029±0.008%)。以上より、選択的EP4作動薬は短期的には、水再吸収を亢進しアルドステロン上昇を生じるが、Na再吸収を亢進せず、K排泄を抑制することが明らかとなった。培養腎皮質集合管(M-1)細胞へのEP(10^<-6>M)およびAC作動薬(Forscolin:10^<-6>M)負荷はp38, Akt, Sgk1蛋白リン酸化を抑制し、p38蛋白脱リン酸化酵素であるMKP1の発現を誘導した。選択的p38阻害薬(BIRB796:10^<-5>M)は、Akt, Sgk1蛋白リン酸化を抑制した。以上より、選択的EP4作動薬によるMKP-1の誘導とp38蛋白脱リン酸化が、Akt, Sgk1蛋白リン酸化の抑制により、Na再吸収を抑制する可能性が示唆された。本研究より、EP_4受容体活性化の水再吸収の促進とNa再吸収の抑制機序の一端が明らかとなった。本研究で得られた結果は、PGE_2の制御による夜間多尿の治療法開発など、今後の幅広い臨床応用が期待される。
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