血管平滑筋細胞は細胞外液の高カルシウムおよび高リンの環境下では、血管平滑筋細胞としての性質を失い、骨芽細胞様の形質を獲得することによって、血管中膜を主座とするメンケベルグ型の血管石灰化をきたすことが知られている。われわれは、このことをヒトおよびラットの血管平滑筋細胞においても認められることをvon Kossa染色およびAlizarin Red染色により確認した。この実験モデルにおいて、終末糖化産物(AGE)およびペントシジンの効果を検討したところ、BSAのグリコールアルデヒド処理によって得られたAGE3が最も石灰化能が強く、グリセルアルデヒド処理によって得られたAGE2およびペントシジンでも弱いながら石灰化が認められた。培養細胞のCa沈着についてもほぼ同様の結果が得られた。また、このCa沈着は検討した範囲内において、AGEの処理時間および濃度依存的であった。 AGEはその受容体RAGEに結合し、下流のシグナルによって血管平滑筋細胞の形質転換が惹起されるものと考えられるが、その詳細な機序は不明である。われわれは、酸化ストレスおよびアポトーシスの両面からアプローチしている。その結果、AGEは有意に酸化ストレスの指標である過酸化水素の産生を亢進することが明らかとなった。さらに、抗酸化剤であるTEMPOLの前処置によってAGE誘導性のCa沈着が抑制されることが明らかになった。したがって、今後はより詳細な検討が必要であると考えられる。一方、AGEによりアポトーシスが促進されるか否かについては現在検討中である。また、尿毒素物質であるフェニル酢酸(PAA)などの影響についても検討している。 さらに、われわれは、内皮細胞へのAGE/PAAの影響についても検討している。AGEおよびPAAがTNFα産生を促進する結果を得ており、酸化ストレスやアポトーシスへの影響について検討中である。
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