長期透析患者に見られる高リン血症は、異所性石灰化、二次性副甲状腺機能亢進症を誘発し、生命予後不良につながる直接的な原因となる。しかしながら高リン血症による異所性石灰化の詳細と抑制方法は現在不明であり、その解明が切望されている。骨、特に骨吸収を担う破骨細胞のリン代謝調節に注目し、異所性石灰化の制御分子の候補として、リンチャネルBVPiC85の解析を行っている。 BVPiC85蛋白質は膜型の糖蛋白質であるため、stable cell lineを作製し検討を行った。タンパク質発現解析、in vitro translationによる糖鎖解析、confocalを用いた局在の検討の結果、成熟糖鎖の付加がBVPic85の機能に重要である事を明らかにした。糖鎖付加阻害変異体は、膜での発現量・局在量が低下するとともにリン輸送活性も低下したことより、糖鎖はBVPic85の膜での安定性に関与することが示された。またその分解経路はProteasomeによる可能性が示され、他のリントランスポーターとは異なっており、これらの違いが機能の違いにつながる可能性を示した。また新規リン調節系として注目されているKlotho/FGF23との関連を検討した結果、klothoが直接BVPiC85の機能を調節する可能性が示されたことは興味深く、今後Klotho KOマウスを用いて血管平滑筋細胞の異所性石灰化や、高リン食投与時の異所性石灰化の発症速度、また、リン吸着剤における影響の検討を行う予定である。さらにBVPiC85のノックアウトマウス作製、血管平滑筋細胞を用いたBVPiC85の機能解明、BVPiC85と相互作用する蛋白質の同定等を進めることによりBVPiC85の生体内における役割と、生命予後を左右する異所性石灰化の分子制御機構を明らかにする。
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