生体構成成分は、食事成分と共通であり、(グルコース、コレステロールなど)、生体はその構成成分を絶えず入れ替えている。しかしながら、生体が、食事から新しい栄養成分をどのようにして自らの古い構成成分と区別し、交換しているのかについては全くといっていいほど明らかにされていない。腎不全/透析患者にみられるミネラル代謝異常(高リン血症等)や合併症(異所性石灰化)は、腸管から吸収された栄養素が、本来なら各臓器代謝を経て、腎臓から排泄されるはずが、上述した入れ替え機構の異常により生体のあらゆる組織に蓄積することが原因と考えられる。そこで、カルシウム/リン比の制御機構の解明を行い、また食事から摂取したカルシウム/リンを骨に導く先導因子の同定を目的とし、研究を行った。申請者が開発した 骨細胞を任意の時期に特異的に死滅させることの出来るトランスジェニックマウスを用いて、カルシウム/リンの体内での動態を詳細に検討した。結果、骨細胞破壊マウスは骨量が著しく低下し、破骨細胞の分化および機能の活性化、骨芽細胞機能抑制を生じる事が明らかになった。さらに、骨細胞は生体内リン代謝調節ホルモンであるFGF-23を分泌し、腎臓からのリン排泄を促すが、このホルモンが低下しても、著しいリン排泄が促進した。またこの現象には既存のリン利尿ホルモンは関与しない事を明らかにした。そこで、これまでに申請者が想定してきた、食事から摂取したカルシウム/リンを骨に導く先導因子(LPP)の同定、さらにLPPにより制御される、新規リン利尿因子を探索した結果、いくつかの候補をマイクロDNA解析、メタボローム解析で見いだした。LPPはカルシウム/リンを正常に骨へ蓄積させるだけでなく、エネルギー代謝に関連する可能性が示唆された。さらなる詳細解析を遺伝子組み換え動物を用い検討している。
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