研究概要 |
研究代表者らは,組AT1受容体発現量/ATRAP発現量を組織局所でのAT1受容体情報伝達系活性度として捉えることにより,組織レニン-アンジオテンシン系活性の新しい指標として有用である可能性を提唱している.この『組織ATRAP発現量/AT1受容体発現量の低下→組織局所でのATRAP発現低下によるAT1受容体情報伝達系活性の亢進→心血管系疾患,腎障害,メタボリック症候群の発症・進展』という仮説を実証するために,平成20年度は,主にまず病態モデル動物における組織ATRAP発現調節とAT1受容体発現との関連について検討した.そして,ATRAPはAT1受容体系の活性化を抑制する臓器保護的な作用が期待され,将来的にはATRAP特異的活性化薬の開発などが待ち望まれるが,研究代表者らはその前段階として高血圧に対する降圧薬投与が組織におけるATRAPの発現調節およびATRAPとAT1受容体との発現量バランスにどのような影響を与えるかについて,本態性高血圧の病態モデル動物(高血圧自然発症ラット,SHR)を用いて検討した.その結果,SHRでの高血圧の進展にともない組織特異的にATRAP発現が変化するとともにATRAPとAT1受容体との発現量の比率が低下して両者間の発現バランスが悪化することや,非降圧用量のAT1受容体拮抗薬(ARB)オルメサルタンを投与することにより,悪化した両者の発現バランスの改善とともに劇的な心肥大の抑制がみられることを明らかにし,組織特異的なATRAPとAT1受容体との発現量のバランスの改善がARBオルメサルタンの降圧を超えた多面的な作用のひとつである可能性を示した(Hypertens2008).
|