副甲状腺細胞は細胞膜上のカルシウム感知受容体(calcium sensing-receptor ; CaR)により細胞外カルシウム濃度に応じて副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone ; PTH)の分泌量を調節している。近年、細胞外カルシウム濃度の上昇とともにN端側の数ペプチドが欠損したPTH断片の分泌割合が増加することが示された。このようなN端断片化PTHは生理活性を有さないことから、PTH分子のN端断片化反応はPTH分泌の調節機構の一つであると考えられる。今回、PTH分子のN端断片化機構ついて、既知の分泌抑制機構と共通の制御を受けているのか否かに注目し、ヒト副甲状腺組織初代培養系を用いて検討を行った。 副甲状腺摘出術(PTX)に至った二次性副甲状腺機能亢進症の副甲状腺組織初代培養系を用い、細胞内カルシウムキレーター(BAPTA-AM)の添加による、細胞外カルシウム濃度依存性のPTH分子のN端断片化反応への影響を検討した。BAPTA-AM添加にて細胞外高カルシウム環境下でのPTH分泌抑制は解除されたが、分泌されたN端断片化PTHの割合には変化を認めなかった。PTH分子N端断片化機構の細胞内メカニズムはPTH分泌抑制機構における細胞内シグナル伝達系とは異なることが示唆された。今後、既知のプロテアーゼに対するプロテアーゼ阻害剤を投与し、PTH分子N端断片化が抑制されるかについても検討する予定である。
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