研究概要 |
心血管系の石灰化は腎不全患者の死因の第1位である心血管系合併症を引き起こす要因の1つであり腎不全患者において血管の石灰化(特に中動脈の石灰化)を制御することが患者の合併症を予防し、死亡危険率を下げるのに必要不可欠である。血管石灰化には末期腎不全患者や閉塞性動脈硬化症患者に認められるメンケベルグ型石灰化があるが、これは動脈中膜の平滑筋にカルシウム・リンを含むハイドロキシアパタイトが沈着して石灰化するタイプで、特に末期透析患者で高リン血症+二次性副甲状腺亢進症を合併している患者には必発である。さらにこういった心血管系の合併症を引き起こしている動脈硬化病変に対してPTA等の血管内皮障害を引き起こす機会が多くなってきている。 本研究において二次性副甲状腺機能亢進症で起こりうる高リンが血管石灰化に及ぼす影響と血管内皮障害血管に及ぼす影響とを検討するために、以下の様な実験をおこなった。 ラット大動脈の血管培養系を用いてメンケベルグ型石灰化モデルを作製し、分子生物学的手法を用いてそのメカニズムの検討を行った。メンケベルグ型石灰化誘導には培養液のリン濃度を3.5mM、コントロールとして0.9mMに調整し、血管石灰化を誘導した。血管石灰化の評価としてカルシウム濃度、von Kossa染色により組織学的に石灰沈着を確認した。 さらにラット大動脈にバルーンで1.0気圧30秒傷害した後、2~3cmのring状に切断し、高P負荷、正常P培地で3,5,7,10日間培養し石灰化誘導の影響を検討し、誘導因子の検索をおこなった。この実験においては、正常血管の誘導と比較して3日目において石灰化の誘導を促進することを確認した。PTAバルーンの圧による障害の程度により、石灰化の誘導に差があることを確認した。 PTA障害のメカニズムをさらに検討する予定である。
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