心血管系の石灰化は透析患者の死因の第1位である心血管系合併症を引き起こす要因の1つであり透析患者において血管の石灰化を制御することが患者の合併症を予防し、死亡危険率を下げるのに必要不可欠である。血管石灰化には末期腎不全患者や閉塞性動脈硬化症患者に認められるメンケベルグ型石灰化がある。これは動脈中膜の平滑筋にカルシウム・リンを含むハイドロキシアパタイトが沈着して石灰化するタイプで、特に末期透析患者で高リン血症+二次性副甲状腺亢進症を合併している患者には必発であり、心血管系の動脈硬化病変に対してPTAまたはステント留置にて、血管内膜傷害を起こす機会が多くなっている。 当該年度の研究に於いては、ラット大動脈の血管培養系を用いて、石灰化モデルを作製し、高リン負荷およびバールーンで内膜障害を与え、高リンおよび内膜障害が血管に及ぼす石灰化誘導の影響を、分子生物学的手法を用いて解析を行った。高リン負荷単独で、石灰化の誘導が培養10日で観察された。高リン負荷+内膜障害では、培養3日目より石灰化を観察した。なお石灰化の指標としてT石灰化の原因の一つとしてvon Kossa染色を用いて顕微鏡下で観察した。さらにその石灰化を誘導するものを検索するためにTUNEL染色を行い、検討した。高リン負荷単独に比し、高リン負荷+内膜障害においては、培養3日からTUNEL陽性細胞が増加し明らかに高リン状態での内膜障害における石灰化誘導が増強されたと考えられた。このことは透析患者さんに於いてもPTA治療後には、十分石灰化誘導がおこりうると考えられ、高リン状態の是正が重要となることを示唆している。
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