FGF23は骨で産生され、標的臓器である腎臓において、FGF受容体及びKlothoと複合体を形成することによりリン酸排泄量を増加させるendocrine FGFである。FGF23の産生はビタミンDにより制御されることが知られているが、血清リン値と血中FGF23レベルとの間の相関は必ずしも明確ではない。近年、細胞外無機リン酸濃度変化が骨芽細胞などでシグナルとして作用し、遺伝子発現を変化させることが示唆されているところから、細胞外無機リン酸そのものがシグナルとして尿細管細胞に作用し、FGF23に対する感受性に影響を与える可能性について検討した。低レベルながらKlothoを発現しており、FGF23に応答性を示すヒト胎児腎臓由来細胞株HEK293細胞を実験に用いた。FGF23の添加及び細胞外液中の無機リン酸濃度の上昇は、ともにERK1/2のリン酸化、early growth response-1(Egr-1)遺伝子の発現誘導をもたらし、FGF23シグナルと細胞外無機リン酸のシグナルが下流のネットワークを共有する可能性が示唆された。また、HEK293の細胞外無機リン酸応答性には、ナトリウム・リン酸共輸送担体が関与していた。HEK293にKlothoを過剰発現させても、細胞外無機リン酸応答性には変化を及ぼさなかった。種々の濃度の細胞外無機リン酸存在下におけるFGF23感受性を検討したところ、高濃度リン酸存在下ではFGF23添加によるERK1/2のリン酸化の増強作用が減弱した。一方、ナトリウム・リン酸共輸送担体に対する阻害剤であるphosphonoformic acidの存在下では、HEK293のFGF23応答性が減弱した。以上から、細胞外無機リン酸濃度の変化は尿細管のFGF23応答性に影響することが示唆された。
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