研究課題
二次元免疫プロットと質量分析の手法を用いたこれまでの研究の結果、多発性硬化症(MS)患者の血清中に有意に多く存在する自己抗体の認識抗原蛋白として、Phosphoglycerate mutase 1 (PGAM 1)とStress-70 proteln(mtHSP70)を同定した。本年度、上記のヒトリコンビナント蛋白を用いて一次元免疫プロットにより対象患者の血清中に存在する、これら自己抗体の検出を行った。対象はPoserの診断基準によるclinically definite MS患者25名、Parkinson病患者21名、多発性脳梗塞患者19名、感染性髄膜脳炎患者20名、健常者(HCs)27名とした。結果、抗PGAM1抗体の陽性率は対象コントロール(24~32%)と比較してMs患者(81%)で有意に高かった(p<0.05)。一方、抗mtHSP70抗体の陽性率も、対象コントロール(20~30%)と比較してMS患者(68%)で有意に高かった(p<0.05)。しかしいずれの自己抗体に関しても、陽性・陰性者間のMS患者の臨床症状、画像所見に有意な相違は認めなかった。一方、MSに対する更なる特異性の向上を目的として、抗PGAM1抗体と抗mtHSP70抗体が共に陽性となる率を検討した。結果、対象コントロール(0~16%)と比較してMS患者(57%)で有意に陽性率が高く(p<0.05)、特異度も93%と高いものであった。mtHSP70はHeat shock protein 70 (HSP70) familyのひとつで、ミトコンドリア内に局在し、主にシャペロン蛋白として働く。MSの病態におけるmtHSP70に対する自己抗体の役割は明らかでないが、MSの活動性病変でmtHSP70の発現が亢進しているという報告や、MS患者の髄液中でHSP70 familyに対する自己抗体が上昇しており疾患活動性と相関するという報告があることから、mtHSP70あるいは抗mtHSP70抗体がMSの病態において何らかの役割を担っていると推察した。PGAMIは解糖系酵素のひとつで、cytosolに局在し、脳や肝臓などに存在し、肝臓においては抗PGAM1抗体と自己免疫性肝炎との関連性を指摘した報告がある。今回、抗mtHSP70抗体と抗PGAMI抗体を組み合わせることによりMsに対する特異度が高まることから、同疾患の診断において極めて有用であると考えられた。
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