研究概要 |
紀伊半島に多発する筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合(紀伊ALS/PDC)における発症要因と病態解明を目的に、下記の点について検討を行った。 1)遺伝子検索 (1)候補遺伝子解析:パーキンソン病関連遺伝子(alpha-synuclein,LRRK2,parkin,DJ-1,PINK1,ATP13A2)、認知症関連遺伝子(APOE4,MAPT,PGRN,TARDBP,GSK3β、運動ニューロン疾患関連遺伝子(SOD1,SOD2,SOD3,ALS2/alsin,SMN1,ANG,VEGF,VCP,VAPB,DCTN1 CHMP2B)について、既知の変異の有無を検討したが、すべての遺伝子について変異は認めなかった。また、平行して行ったGene dosage analyses(MAPT,alpha-synuclein,TARDBP,GSK3β,parkin)についても異常を認めなかった。さらに、若年性ALSの原因遺伝子として2009年春に同定されたFUS/TLS遺伝子の解析を行ったが、異常を認めなかった。 (2)TRPM7遺伝子:細胞内カルシウムとマグネシウムの調節に関与し、グアム症例でミスセンス変異の認められたTRPM7遺伝子について検討したが、紀伊症例では同一の変異に認めなかった。 2)TDP-43蛋白:2006年に発見されたALSと前頭側頭型認知症の神経細胞に特異的に出現するTDP-43蛋白について生化学的、免疫組織化学的に検討した。紀伊ALS/PDC 5例での検討では、全例で海馬と脊髄の神経細胞内にTDP-43陽性封入体を認めた。ALS/PDCは、tau,α-synuclein,TDP-43が複合して蓄積する疾患であることがわかった。 3)OPTN蛋白:2010年に遺伝性ALSの発症遺伝子として同定されたOPTN蛋白は、紀伊ALS/PDCの脊髄運動ニューロンにおいて主な蓄積蛋白としては認められず、また遺伝子変異もなかった。 4)Ataxin遺伝子解析:現在、ALSのリスク遺伝子として報告されたataxin遺伝子のpoly Q延長について、解析を進めている。
|