研究課題
慢性脳虚血に対して効果が期待できる再生医療の有力な手段として血管再生治療が挙げられる。特に、近年ES細胞より血管を構成する内皮細胞及び血管平滑筋細胞の双方に分化する血管前駆細胞(Vascular Progenitor Cells ; VPC)が同定されている。VPCをマウス慢性脳低灌流モデルに対して経動脈的に投与することにより、脳内血管が新生し慢性脳虚血の改善につながることが期待できる。本研究ではマウス慢性脳低灌流モデルに対して、ES細胞由来の血管前駆細胞を移植することにより、慢性脳虚血に対する血管前駆細胞移植の効果を検討した。C57BL/6Jマウスの両側頚動脈を内径0.18mmのマイクロコイルで狭窄させ、脳血流を前値の70-80%に低下させた(BCAS ; bilateral carotid artery stenosis)。これらのBDCAS群および偽手術群の大脳皮質および線条体に、VPCs浮遊液を定位脳手術的に移植移植した。その結果、BCAS群では移植細胞の生着を大脳皮質および線条体で認めたが、偽手術群では陰性であった。また、血管構造が形成された陽性面積を画像解析で評価したが、大脳皮質では血管構造を認めず、BCAS群の線条体でのみ有意な血管構造の増加を認めた。血管構造の構築には血管新生因子の関与が示唆されており、実際急性虚血脳ではVEGF、bFGFの増加が報告されている。このため、RT-PCRでVEGFを定量したが、大脳皮質・線条体のいずれにおいても有意なVEGF mRNAの増加を認めなかった。以上の結果から、慢性虚血脳ではVPCsの生着が認められ、慢性虚血脳におけるVEGF以外の血管新生因子がその生着に関与する可能性が示された。
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