研究課題
血管性認知症、アルツハイマー病などの認知症では、脳血流の慢性的低下があり、認知機能障害の進展に関与が示唆されている。認知症の原因に関与する慢性脳低灌流に対して、血管床を増加させる血管再建療法は有効性が期待される。本研究では、血管性認知症のモデル動物である両側頸動脈狭窄(Bilateral carotid artery stenosis;BCAS)マウスを対象として、ヒト人工多能性幹細胞由来の血管前駆細胞(VPC)を移植してその効果を検討した。両側頸動脈に偽手術を行ったマウスを対照として用い(偽手術群)、各群5匹を作成した。VPC細胞浮遊液(1.0x10^5)をBCAS群、偽手術群の大脳皮質または線条体に定位脳手術で局所投与した。7日後にマウスを灌流固定して切片を作成して、移植細胞の生着を検討した。VPCの生着はBCAS群の大脳皮質・線条体で観察されたが、偽手術動物では観察されなかった。生着細胞群の中で血管様構造の形成が線条体で認められたが、大脳皮質では観察されなかった。このような血管様構造はCD31との蛍光2重免疫組織化学ではCD31要請であり、血管内皮の性格を持つものと考えられた。血管様構造の面積を画像解析装置で定量すると、偽手術群に比べBCAS群で有意に増加していた(p<0.05)。血管の分化に関与するVEGF mRNAをRT-PCRで定量評価したが、両群で有意差を認めなかった。以上より、慢性虚血脳の線条体では、VPCの分化・生着に必要な分子の存在が示唆されるが、VEGFの関与は否定的であった。
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Stroke
巻: 41 ページ: 1798-1806
巻: 41 ページ: 1278-1284
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