研究課題
高血圧自然発症ラット(SHR)における一側総頸動脈閉塞後の脳軟膜動脈吻合発達および降圧薬の影響を、脳血流自動調節能の観点から検討した。正常血圧ラット(WKY)およびSHRにおいて、コントロール、一側総頸動脈閉塞30分後、一側総頸動脈閉塞2週間後の動物を実験に供した。SHRではvehicleまたはアンジオテンシンII受容体拮抗薬オルメサルタン(5mg/kg/日)を2週間連日投与した。脳血流自動調節能は、ラットを人工呼吸管理下で頭頂葉皮質領域にレーザードプラ血流計を装着しベースラインの脳血流量を計測した後、大腿動脈より脱血により血圧を低下させベースラインの脳血流量より20%低下した血圧値を脳血流自動調節能下限域と定義し求めた。WKYでは、コントロール状態での脳血流自動調節能下限域は51±3mmHgで、一側総頸動脈閉塞30分後には66±5mmHgに上昇していたが、2週間後には52±5mmHgとコントロールと同じレベルに復していた。一方vehicleを投与したSHRでは、コントロールで75±7mmHgの自動調節能下限域が一側総頸動脈閉塞30分後には99±3mmHgに上昇し、2週間後にも94±11mmHgと高値のままであった。しかしオルメサルタン慢性経口投与により降圧を行ったSHRでは、コントロールで62±4mmHgの自動調節能下限域が一側総頸動脈閉塞30分後には81±5mmHgと上昇したが、2週間後には61±4mmHgとコントロールと同じレベルに復していた。以上の結果から、正常血圧、高血圧ラットともに一側総頸動脈閉塞30分後の直後では脳血流自動調節能下限域が上昇するか、正常血圧ラットおよび降圧治療を行ったSHRでぼ2週間後には、脳軟膜動脈吻合が発達し脳血流自動調節能下限域がコントロールと同じレベルに復していると考えられた。一方、高血圧のまま放置されたSHRでは、脳軟膜動脈吻合の発達が不良で、一側総頸動脈閉塞により一旦上昇した脳血流自動調節能下限域が2週間後もその値のままであることが示された。
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J Cerebral Blood Flow Metab (印刷中)(in press, 2009)
Hypertens Res 32
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