本研究はミオトニー症候群、とくに骨格筋Naチャネル病(先天性パラミオトニー、高カリウム性周期性四肢麻痺など)および筋強直性ジストロフィー症の病態を分子・細胞レベルで解析し、シミュレーションなどを用いて組織レベルでの理解を行い、治療研究へ結びつけることを目的としている。 まず、骨格筋Naチャネル病については、昨年同定した世界で初めてのイントロン領域の遺伝子変異によるミオトニーの症例について解析を行った。変異が存在するイントロンはスプライジング制御機構がまだ未解明なAT-ACIIイントロンと呼ばれる特殊なイントロンであることから、ミニジーンを用いた解析を海外との共同研究で行った。その結果、この変異はU1snRNPに加え、U6 snRNPの5'スプライス部位へのmRNA結合に異常をきたすことが判明し、両者がAT-ACIIイントロンの5'のスプライス部位の認識・決定に重要であることが明らかとなった。 いっぽう筋強直性ジストロフィーは全身疾患であり、心伝導障害を中心とした不整脈を合併し、突然死にも関与している可能性が報告されている。計画にはなかったが本症の剖検心筋を入手できたため、mRNAのスプライシング異常を検討したところ、不整脈と密接に関連する可能性のあるイオンチャネルのmRNAスプライシングの異常を見出すことができた。さらにこの異常チャネルの電気生理学的機能解析の結果をコンピューターシミュレーションで検討し、実際に不整脈と関連する可能性が明らかになっている。このように、計画にあった骨格筋に加え、心筋での本症の病態についても、シミュレーションを用い組織レベルでの解析まで行うことができた。
|