先天性筋無力症候群(CMS)は遺伝的要因により神経・筋間の信号伝達が不完全となり脱力・易疲労性といった症状を呈する疾患である。まれな疾患ではないと考えられているが、国内からの報告はこれまで2~3例にとどまっている。CMSのうち10~40%はDok-7変異によるものと考えられている。Dok-7は2006年に東京医科歯科大学の山梨ら(連携研究者、現東京大学)により発見された蛋白である。国内におけるDok-7変異型CMSの症例集積とそれによるDok-7遺伝子の病態への関わりの解析、さらにそこからCMSや筋無力症全般の治療法の開発を目指す、というのが本研究の目的である。 本年度も本疾患が疑われる症例について遺伝子解析を行ってきたが、現在のところ、変異を有する患者は見つかっていない。小児科領域あるいは「抗体陰性の重症筋無力症」といった症例のなかに潜在的にCMS症例が存在する可能性があり、これまでも先天性筋無力症が疑われる症例に関する情報の収集を行ってきたが、引き続き情報収集を続けていく。変異症例が見つかれば、その機能解析を行っていく方針である。
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