研究課題
プリオン病の本質はαヘリックス構造に富んだ蛋白質である正常型プリオン蛋白質(PrP^c)が翻訳後に何らかの修飾をうけて立体構造変換(コンフォメーション変化)を起こしてβシート構造に富んだ異常型プリオン蛋白(Prp^<Sc>)に変換され、Prp^<Sc>が難溶性の凝集体やアミロイドとなって組織に沈着することにある。異常プリオン蛋白の沈着には正常プリオン蛋白が必須条件である。プリオン蛋白のin situプリオン感染マウスの腎臓の免疫染色において、正常プリオン蛋白は存在しているものの、異常プリオン蛋白が沈着していない。つまり正常プリオン蛋白が異常プリオン蛋白のコンフォメーションの場ではないことを示しており、何かの機序により正常プリオン蛋白が異常プリオン蛋白のコンフォメーション変化を抑制している可能性が考えられた。研究の目的は常プリオン蛋白が異常プリオン蛋白のコンフォメーション変化を抑制している因子を検索することを目的とした。本年度は我々はcDNA substrationアッセイによりプリオン感染マウス腎臓において、正常マウスとプリオン感染マウスでの腎臓でのmRNAでの遺伝子発現の違いを比較・検討した。つまりプリオン感染マウスの腎臓において強発現している遺伝子がいわゆるプリオン抑制遺伝子の候補である。今回の手法にて6個の候補遺伝子を見つける事ができた。今回の実験にてすべての遺伝子をクローニングすることが可能となった。6個の遺伝子の中2個はハウスキーピング遺伝子であったが、3個遺伝子は酸化ストレスに関与する遺伝子であり、1個はオステオポンチンという遺伝子であった。そのために正常マウス・プリオン感染マウスでの腎臓内での発現量のチェックをnorthern blot 又はreal time PCRにて発現量の違いを比較検討した。プリオン感染マウスでの腎臓内で最もオステオポンチンの発現が強かった。3個遺伝子は酸化ストレスに関与する遺伝子であったために正常マウス・プリオン感染マウスでの腎臓でのアポトーシス及び酸化ストレスマーカーについて検討した。tunnel染色にて正常プリオンマウスに比べプリオン感染マウスでの腎臓で明らかにアポトーシスに陥った細胞が増えていた。本年度の研究計画ではオステオポンチンのノックアウトマウスの作成を行い、プリオン感染実験を行った。実験から未だ30日程度しか経っていない。
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