完全長dystrophin発現カセットをもつhelper-dependent adenovirus vector (HDAd)を作製し、dkoマウスの四肢筋、体幹筋に遺伝子導入を行ない投与8週後にて評価を行ない、組織学的異常のみならず、運動機能、生命予後の改善を認めたことを明らかにしているが、さらにmdxマウスとdkoマウスの呼吸機能を、whole-body plethysmographyを用いてモニターし、横隔膜の組織学的変化と比較検討した。MictagをつけたHDAdmyc-dystrophinを、1週齢dkoマウス腹腔内へ投与、8週後に横隔膜での発現を確認し、治療効果を組織学的・呼吸生理学的に調べた。結果はmdxマウスでは7月齢、dkoマウスでは2月齢で、拘束性換気障害を呈した。dkoマウスでは投与8週後で最大68%の陽性線維を認め、中心核筋線維と骨格筋繊維化の減少を確認した。治療により呼吸回数は376±20.3が327±65.4回/分(p<0.0001)、一回換気量も5.6±0.8から6.0±0.7ml/kg(p=0.037)と有意に改善した。さらに多数のモデル動物で検討を続けている。また、Lentiviral vectorによる短縮型dystrophin遺伝子のmdx骨格筋での長期発現と表現型の改善、骨格筋特異的幹細胞への長期的な遺伝子導入が示された。これらの研究成果の一部は「筋ジストロフィーに対する根本治療を実現するための技術集約的研究」研究班班会議(武田班)においても発表した。
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