昨年度までの検討で、α-シヌクレイン分解活性を有するニューロシンが主として分泌経路によって細胞外に分泌されることを示した。さらに平成21年度には、細胞抽出液および培養上清に存在するニューロシンの、合成セリンプロテアーゼ基質ペプチド(Boc-Gln-Ala-Arg-MCA)に対する分解活性を定量的に検討し、細胞外ニューロシンにはペプチド分解活性があったが、細胞内ニューロシンには分解活性が無いことを示した。平成22年度は、ニューロシンの細胞内(細胞抽出液)および細胞外(培養上清)でのα-シヌクレイン分解活性を、これまでと同様にニューロシンを発現させた培養細胞で検討するとともに、新たにpre-pro-ニューロシンおよびα-シヌクレイン発現ベクターをHEK293T細胞にトランスフェクトしてニューロシンとα-シヌクレインを共発現させた培養細胞系を作成し、この培養細胞系を用いてニューロシンの細胞内におけるα-シヌクレイン分解活性を検討した。まず、このような共発現細胞系においても細胞抽出液中にはα-シヌクレインの分解産物は検出できず、細胞内のニューロシンはα-シヌクレイン分解活性を有していなかった。一方、ニューロシン発現細胞の培養上清中に分泌された細胞外ニューロシンについては、培養上清にリコンビナントα-シヌクレインを添加し、一定時間ごとに一部を回収して上清中のα-シヌクレインの経時的変化をウエスタンブロッティングで検討した。その結果、培養上清中のα-シヌクレインは経時的に減少し、細胞外に分泌されたニューロシンはα-シヌクレイン分解活性を有していた。以上からは、ニューロシンは主として分泌経路により細胞外に分泌され、細胞外セリンプロテアーゼとして細胞外でのα-シヌクレインの分解・代謝に関与していると考えられた。
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