研究概要 |
1. 遺伝性痙性対麻痺に関する全国施設よりの検体収集と既存遺伝子の変異解析 全国の神経内科医の常勤している日本神経学会教育施設,教育関連施設と,小児神経学会評議員の常勤されている施設より,2010年3月15日現在,39都道府県,112施設より家系が登録され,インフォームドコンセントを得た上で採血し,DNAを抽出し,204検体を収集している.また,検体だけでなく,臨床症状や画像検査結果なども併せて集積しており,本邦の遺伝性痙性対麻痺家系のリソース基盤ができつつある. 既存の遺伝子変異の有無を,平成19年度より東大神経内科と協力の上遺伝子解析を行っているが,現在まで175検体を送付し解析を依頼した.結果が判明したもののうち,常染色体優性遺伝例の47%がSPG4であった.また,当科でもARSACS(Autosomal Recessive Spastic Ataxia Charlevoix-Saguenay)が疑われる5家系について,遺伝子解析を行い,1家系で新たな変異を見出した. 2. 連鎖解析と候補遺伝子の塩基配列の決定 両親が従兄弟婚で常染色体劣性遺伝性の痙性対麻痺,視神経萎縮末梢神経障害を伴った兄弟例において,インフォームドコンセントを得,患者白血球由来DNAを用いてSNP6.0アレイによる連鎖解析を行った.染色体2,6,12,13の一部分にホモ接合領域の長い部分を認め,原因遺伝子と連鎖した部位と考えた.これらの領域は,既存の遺伝性痙性対麻痺の遺伝子座位とは一致せず,新たな遺伝性痙性対麻痺の遺伝子座を有する病型と考えられた.今後,連鎖する染色体領域内に存在する候補遺伝子のシークエンスを計画し行う予定である.
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