研究概要 |
1. 遺伝性痙性対麻痺に関する全国施設よりの検体収集と既存遺伝子の変異解析 全国の施設より,2011年4月22日現在,42都道府県,135施設より家系が登録され,インフォームドコンセントを得た上で採血し,DNAを抽出し,260検体を収集している.また,検体だけでなく,臨床症状や画像検査結果なども併せて集積しており,本邦の遺伝性痙性対麻痺家系のリソースが形成されている. 既存の遺伝子変異の有無を,東大神経内科に現在まで233検体を送付し解析を依頼した.結果が判明したもののうち,常染色体優性遺伝例の約50%がSPG4であった.また,当科でもARSACS(Autosomal Recessive Spastic Ataxia Charlevoix-Saguenay)が疑われる13家系について,遺伝子解析を行い,3家系で新たな変異を見出した. 2. 連鎖解析と候補遺伝子の塩基配列の決定 両親が従兄弟婚で常染色体劣性遺伝性の痙性対麻痺,視神経萎縮,末梢神経障害を伴った兄弟例において,インフォームドコンセントを得,患者白血球由来DNAを用いてSNP6.0アレイによる連鎖解析を行った.染色体2,6,12,13の一部分に原因遺伝子と連鎖した部位を同定した.発端者の遺伝子を用いてexome解析を行い,連鎖する染色体領域内に存在する遺伝子変異を検索したところ,第12番染色体の3つの遺伝子に,新規遺伝子変異を同定した.うち2つの遺伝子はミトコンドリア関連遺伝子であり,現在患者皮膚線維芽細胞を用いてミトコンドリア機能の解析を行っている.
|