目的:実験的脳梗塞モデルにおいて骨髄幹細胞移植による機能改善効果が認められ、今後の臨床応用が期待されていることから、細胞治療をより効果的に行う方法が求められている。今年度の研究では、ラット一過性中大脳動脈閉塞モデルを用い、骨髄間葉系幹細胞(MSCs)移植に神経保護効果を有するFK506を併用することで脳保護および神経再生効果を増強できるかについて検討した。 方法:雄性SDラットを用い、ハロセン麻酔下にsuture法による90分間の一過性中大脳動脈閉塞を行い、再潅流30分後に1)vehicle群、2)MSCs単独群(EGFPラット由来;1X106投与)、3)FK506単独群(0.3mg/kg投与)、4)MSCs・FK506併用群の4群を作成した。再潅流1日および7日後に梗塞体積(TTC染色)、神経徴候、MSCs数の評価を行い、さらに再潅流1日後にBcl-2、Bax、MPO、Ibalに対する特異的抗体を用いた免疫組織化学およびTUNELによる検討を行った。 結果:併用群で他群と比較して有意な梗塞体積縮小・脳浮腫抑制および神経徴候の改善が認められ、虚血周辺領域でのBcl-2発現増強、Bax発現減少、TUNEL陽性細胞の減少、好中球浸潤およびミクログリア/マクロファージ活性化の抑制を認めた。MSCs単独群では梗塞縮小効果は認められなかったが、vehicle群と比べて7日後の神経徴候の有意な改善が認められた。また、7日後の虚血半球ではMSCs単独群と比べて併用群でより多くのMSCsが認められた。 結論:ラット一過性局所脳虚血モデルにおいて急性期MSCs移植にFK506を併用することで脳保護効果を増強させ得ることが示唆され、虚血周辺部での1)アポトーシスの抑制、2)脳内局所炎症反応の抑制、3)移植細胞の生存の増強などの機序が考えられた。
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