疾患筋組織でO-GlcNAc転移酵素(OGT)の分布を免疫組織化学的により検討した。封入体筋炎と遠位型ミオパチー(DMRV)の筋組織の空胞化線維にOGT陽性封入体を認めた。封入体筋炎ではリン酸化蛋白質の凝集や核転写因子・Elk-1のリン酸化型(pElk-1)の異常凝集がみられる。免疫蛍光法により、OGT・リン酸化蛋白質・DNAの3重染色を行い、リン酸化蛋白質の凝集体とOGTの位置関係を比較したところ、これらのリン酸化蛋白質の異常凝集体とOGT陽性封入体は共存していた。一方、対照例では、OGT陽性封入体を認めなかった。次いで、OGTの産物であるO-GlcNAc修飾蛋白質について、特異抗体を用いて組織化学的に検討したところ、細胞膜と核膜にO-GlcNAcの強い反応が見られた。種々の病的筋の萎縮筋線維では、細胞膜上の陽性反応が低下または消失していた。また、封入体筋炎とDMRVの空胞の一部は辺縁が陽性であった。筋ホモゲネートのO-GlcNAcの免疫ブロットでは、10本程度の陽性バンドがみとめられ、疾患によりパターンに差を認めた。核孔蛋白質nucleoporin p62に対する抗体あるいは上記のElk-1に対する特異抗体を用いた筋ホモゲネートの免疫沈降により、筋組織ではNuc62、Elk-1はO-GlcNAc修飾されていることが分かった。蛋白質のO-GlcNAc修飾はリン酸化と同じアミノ酸残基にされることが多く、リン酸化と共役または拮抗して細胞内シグナル伝達や核細胞質間輸送を制御する。封入体筋炎とDMRVのOGT陽性封入体、O-GlcNAc修飾異常の原因についてさらに追及することにより病的機序の解明を目指したい。
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