当該年度は生化学的方法、特に筋ホモゲネートの電気泳動、免疫沈降により、O-GlcNAc修飾蛋白を分析した。筋組織における筋ホモゲネートのO-GlcNAcの免疫プロットでは、10本程度の陽性バンドがみとめられ、疾患によりパターンに差を認めた。核孔蛋白質nucleoporinp62に対する抗体あるいはシグナル蛋白Elk-1に対する特異抗体を用いた筋ホモゲネートの免疫沈降により、筋組織ではNuc62、Elk-1はリン酸化を受けていること、およびO-GlcNAc修飾されていることが分かった。また、筋ホモゲネートを細胞質と核分画に分けると核分画中の75kDの蛋白質が、筋炎組織で強く発現していることをみいだした。核膜成分やシグナル分子のうち、この分子量をとるものをいくつか検討したが、それらの分子に対する特異抗体で生検筋のホモゲネートを免疫沈降した後に、抗O-GlcNAc抗体を用いて免疫プロットを行ってもバンドは陽性反応を示さず、その候補分子が確かに目的のO-GlcNAc修飾蛋白質であるという裏づけが今のところ得られていない。今後は免疫沈降と質量分析の手法を用いてこの分子の同定をすすめる。 蛋白質のO-GlcNAc修飾は、リン酸化と同じアミノ酸残基に行なわれることが多く、リン酸化と共役または拮抗して細胞内シグナル伝達や核細胞質間輸送を制御する。今回の検討ではnucleoporin p62、Elk-1が筋組織で確かにリン酸化/O-GlcNAc修飾を受けていることを確認した。また核には未知の、75kDの優位なO-GlcNAc修飾蛋白が存在すること、疾患によりその発現に差があることが示唆された。
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